SSS_no.081:悪女のピアニッシモ

君の吸うセブンスターは、私には強すぎた
この少し辛口なメンソールがいいと、言いながら君はむせていたな
君のそんな背伸びが可愛かった、それが言えなかったのが心残りだ

この前、私もたばこを買ってみた
図書館前の喫煙所、いつも君が吸っていた場所で君を待つために
君は来た、たばこを吸う私に少しびっくりしていた
「……それなに?あぁ、ピアニッシモか」
セブンスターの紫煙を燻らせながら、君は私の頭を撫でた
可愛いなの言葉と少し懐かしい煙たさに、久々にどきりとしたよ

で、君は私をバーに連れ出して延々と啜り泣いたな
しょうがないさ、君と気の合う女なんてそうはいない
酔って涙を流す君の頭を、さっきの仕返しとばかりによしよしした
大丈夫さ、今の君ならきっといい人にめぐり合えるよ
「お互い、いい人と会えるといいな」そんなことを君は言った

―あのさ、
私は勇気を振り絞って、涙を拭く君に話しかけた
―私たち、その、
再会は偶然じゃない、君がたばこを吸いに来る時間、調べた
―できたらでいいんだ、
ごめん、君があの子と別れたことも知ってた、同期から聞き出した
―だから、その、私たち、
私は前から変わってない、今も、ずっと、ずるくてひどい、最低の女だ
「もういい。……それ以上、言うな」
そう言って君は私を抱きしめた、少し上がった体温に乗って酒の臭いがした
私はずるくて最低の女、こういう状況をつくれば君がこうすることも計算済みだ
それでも、
それでも君は、それをも承知で、私を抱きしめてくれたのなら……

「お、これいいな、吸いやすい」
いつもの図書館前、ピアニッシモを吸う君がふっと笑った
言えなかった言葉、もう今は恥ずかしくない
―ふふ、君は可愛いな
そうやって照れるところも可愛い、そう言って私は君の頭を撫でた

〜あとがき〜
忘れた頃に砂を吐くような文章を書いてみたくなる、悪い癖
ちなみに私が今吸ってるのはバージニアとかいう、やっぱり女性向け
セブンスターは目にきたので、まだ何本か吸えずに残ってます
もう少しオチをひねりたかったけど、もういいや


  SSS_no.082:君の歯ブラシはピンク色

「なぁ、どうして俺の歯ブラシ青にしたんだよ」
仕方ないだろ、安売りの、青とピンクしかなかったんだから
「えー、じゃあ俺もピンクがよかったなぁ」
なんでだよ、そしたらどっちがどっちのか見分けつかなくなるだろが
「今さらじゃん、だって俺らとっくにキスもしたし、他にも…」
あーもう!分かった、分かったからそれ以上言うな!!
私は自分の予備にと買っておいたもう1本のピンクを出した
そして持ち手に赤いビニールテープを1周巻いて、歯ブラシを渡す
「……なに、これ」
目印、付いてるほうがおまえのだから間違えんなよ
私はパッケージを燃えないゴミに捨てながらそう言った

それでも時々、寝ぼけた彼が印のないほうを使うので参っている
私が青を使えば解決するのかもしれないが、それではなにか負けた気がする
て、おーい、寝癖ついてるぞー
「ふぇ?んぁー……、ぅん……?むぅ……」
はいはい、ほら、おとなしくしてろ、直してやるから
そうやって彼の寝癖を直しながら、私は印のついたほうの歯ブラシを咥える
……まぁ、いいか、今さら気にすることでもないか
寝ぼけたままピンクの歯ブラシを咥えるこのアホ毛が、私にはたまらなく可愛い
変てこな髪型にしてやりたい欲求を今日も抑え、私は彼を会社に送り出した
たぶん、子供ができたら、やっぱりこんな感じなんだろうなぁ


  SSS_no.083:リア充は爆ぜるべき

たまには女の子らしい格好とかしてよ
デートの最中、君はそう言ってケータイでなにやら調べ始めた
アイスコーヒーの氷がほぼ溶ける頃、君は顔を上げて言った
よし、良さげな店を見つけたから、今から行こう、と

残暑の厳しい小路を歩いて10分、汗かきの君はもう滝のようだった
洒落たビルの2階、古着を中心とした若者向けの洋服屋のようだ
しかし互いに女物に疎い、その気配を察してか可愛い女の子の店員が近づいてきた
その女店員は私にスタイルがいいなどと言いながら私を着倒れにせんとする
何やらふんわりとした服に股下のほとんどないデニム、エトセトラ
君の一番気に入ったのは、チェックで少し長めのスカートだった
店員はさらに薄いジャケットを羽織らせ、これからの季節にちょうどいいと褒める
普段スカートなど履かない私には、どうも脚がすぅすぅとしてならない
そんな言葉も、にやにやと私を眺める君には届いていないだろう

いくつか試着した後、カーテンを開けると君と店員はすでにレジにいた
会計を済ませた君は堪えきれないスマイルを溢しながらこちらにやってくる
……ああ、なるほど
してやられた、私の頭はこのときようやく全てを理解した
小奇麗に包装された袋を私に差し出した君は、思えば君からは初めての言葉を聞く
「誕生日おめでとう」
その満面の笑みは、ずるい

確かに先々週の水曜、私の人生は21年目に突入した
試験期間に加え、大学に入ってからは祝ってくれる相手もなく失念していたのだ
1年に1回のイベントと君の願望を両立させた、見事な計画だと感心した
ああ、おそらく、トールドカフェでのケータイも茶番だろう
現に君は律儀にも「計画開始w」とかツイートしてるしな
……さて、君も忘れてはいまいな
再来月の10日、君も21歳になる
私たちが付き合いだして初めて迎える君の誕生日だ
ふふ、どんなことをしたら、君は驚いてくれるかな
とりあえず、この服はそのときまで着てやらないでやろう
まぁ、どうせ君の誕生日が近づくまで秋物は暑くて着れないしな

10月10日、運よく日曜日
私たちは晴れた遊園地を互いの選んだ秋服で訪れていた
「脚がすぅすぅする」「これ、慣れないから動きにくいよ」
そんなことを言い合う男女がいたら、まぁ、あたたかい目で見守ってほしい


  SSS_no.084:※女性は逃げてます

好きな人をどこまででも追いかけることのできるのが恋
好きだという思いを受け止め包みこむことのできるのが愛
つまり、砂浜を追いかけっこする男女のうち、追う男が恋である
じゃあ、女が愛かと言うと、うーん……
まぁ、しっかり読めば、この2人の行く末は分かるはず


  SSS_no.085:君がつくる物語2

嗚咽を消すように僕は君に唇を重ねた
ファーストキスは、しょっぱかった

〜あとがき〜
ちなみに私のファーストは小5、思い出したくもない「度胸試し」でした。
ともに意地っ張りだったせいで、僕とF君の初めては教室で無残にも散りました。
ちくしょう……orz
さらに余談ですが、セカンドはそっち系の男同級生に塾で通り魔されました。
ち、ちくしょう……orz
というわけで、せめて物語の君は女性で脳内変換してください、お願いします。


  SSS_no.086:ミステリー洋館殺人事件

もう嫌だ、だからこんな気味の悪い洋館になんか来たくなかったんだ
10年ぶりに集まった大学時代のミステリー研8人ももう俺と三島、小野、青山だけだ
事の発端は、会長の東野が湖の傍で何者かに石で撲殺されたことから始まった
次に、短気でトラブルメイカーだった石原は浴槽にドライヤーを入れられて感電死
洋館から逃げようと乗った自分の車が燃え、宮部は唯一のつり橋とともに谷底に落ちた
高野が階段で自白遺書とともに首吊り自殺をしたが、明らかに争った形跡があった
まだ……殺人は終わっていない、私は部屋に閉じ篭ることにした
誰もこの部屋には入れない、そうすれば俺は安全だ、違いない
「おい、小野!小野!いたら返事をしろ!」
階下から三島の声がする、どうやら次は小野らしいな
「おい、小野……、うわあああああああ!青山!おい、しっかりしろ、青山!」
違った、青山だった、そうだ、次は青山だったな
俺は氷柱の溶けているのを確認してから、最短ルートで三島のところに向かった
「ああ、黒山……、少し目を離した隙に、青山が、刺されちまったんだ……」

〜あとがき〜
各々のモデルはこんな作家さんです。
被害者達がそれぞれ作品等にちなんだ殺され方をしています。
(慎太郎さんごめんなさい、あなたの作品お恥ずかしながら読んだことないです)

東野:『レイクサイド』 作中、被害者の女性が石で撲殺されている
石原:都知事 短気でトラブルメイカーな雷親父のイメージが強くて、つい
宮部:『火車』 タイトルをモジって、車に火をつけてみた
高野:『13階段』 これもタイトルから、「13階段」は絞首刑云々でggr
小野:『魔性の子』 いわゆる神隠しの要素を、だから生死は明確に書かず
青山:『名探偵コナン』 氷柱を凶器に使ったトリック、定番ですね

あと、三島は『金閣寺』書いて腹掻っ捌いた人です。
黒山だけ実在ではありません。死なないので。「このヤマのクロ」という意味。
これで短編でも書いてみようかなと思いましたが、うん……ムリ、だ。
書かないのでネタバレしますが、小野は終盤に復活します。
最後の最後に復活して、犯行を糾弾してもらおうと思います。
もひとつ、そのあと洋館は全焼、小野を庇った三島は焼け死にます。

多方面に不謹慎極まりないネタでごめんなさい。
そして、どことなく金田一少年臭のするのは気のせいということにしてください。


  SSS_no.087:国語学応用1-102

国語学において、単語とそのものが示す意味に必然的な関係はない
たとえば、イヌとネコを明日よりそれぞれ逆の名で呼ぶ事にしても差し支えない
だから、不審者が来たら10番レジよろしくなどと隠語が作られ、まかり通るのである
そこで、これを見たあなたに提案なのだが、今日より以下の単語を入れ違えてほしい

好き⇔嫌い
ジャンケン⇔エッチ
砂漠⇔ハゲ
神⇔私
天気予報⇔ショートコント

ただし、自己責任でお願いしたい

〜あとがき〜
たとえば、上のを実際に入れ替えてみると、こうなる↓

・子供「ピーマン好きー!(泣」→「これなら食べれる、嫌いになりそう(嬉」
・よーし、なら公平にエッチして決めようぜ
・ねぇ……、○○くんなら、いいよ?ジャンケン、しよ?
・黄砂がハゲの拡大により深刻さを増している / サハラハゲ / 東京ハゲ
・10円砂漠 / 薄ら砂漠
・貴方は私を信じますか? / 八百万の私
・神立○○中学校 / 全て神がやったんです、刑事さん……!
・ではショートコントです、まずは概況から /ヤン坊、マー坊、ショートコント
・去年に漫才で賞をいただいたので、今年は天気予報で頂点を極めてやろうと……

反省はしていない。


  SSS_no.088:夜の浦島太郎

浦島太郎はいじめられていた亀を助けた
そのお礼にと竜宮城に招待され、浦島は亀に乗った
竜宮城では踊りにご馳走、そして乙姫の熱烈な歓迎にあった
名残惜しくも地上に帰った浦島は皺々のお爺さんになってしまった

以下の感想が出たら重症です、ただちに病院に行きましょう
「亀がいじ(め)られてるとか、ご褒美だろ」
「亀に、乗る?……アッー!」
「ストリッパーに女体盛りに美女……フヒヒw」
「ほぅら見ろ、そんなに励むから浦島は精根尽きたんだよ」

ちなみに、これらは全て私とは関係のない感想です、本当です


  SSS_no.089:言いだしっぺ

「言いだしっぺ」はあなどれないルールだ
事物をその困難さや実現可能の有無に問わず押し付ける力がある
だから沈黙は金などという言葉が残っているのだ
杭が必要以上に出ぬようにという、日本人らしさが垣間見れる
それゆえ、言いだしっぺには負のイメージが付きまとう

しかし、よく考えてほしい
「言いだしっぺ」が「言いだしっぺ」を実行すると「有言実行」である
私はもっと「言いだしっぺ」を良い意味で普及させるべきだと思う
それこそ、
  国会議事堂や政府関係の建物からソーラーパネルを設置したり、
  昼の明るいうちはスタジオを出て外から節電を訴えるニュースを読んだり、
そうやって手本をみせていったほうが説得力はあるだろう

だから私は、しばらく黙ってようと思う

〜あとがき〜
名言をつぶやくbotが、こんなようなことをツイートしてました。
 「沈黙は金、雄弁は銀」というが、当時は銀のほうが高価だった。
 加工技術が金よりも難しいからである。
 つまり、そういうことである。
一言一句覚えていないのでこんな感じという紹介で恐縮ですが。


  SSS_no.090:お揃いだったストラップ

今でもケータイの震える度、君を思い出す
揺れるストラップ、旅先で君と買ったお揃いの桃色した勾玉
付けているうちに紐は汚れ、勾玉もくすんで少し傷も目立つようになった
私はそれを丁寧に取り外し磨いて、袋に入れて引き出しの奥にしまった

あれからもう1年がたつ

明日は天気もいいらしい、春を探しに出掛けてみよう
枕元にストラップのないピンクのケータイを置いて、電気のひもを2回引いた


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